sleep dealer


少し気になったので記す(2009年6月12日時点)。
気になったというのは、この映画の邦題やその販売用デザインを最近初めて目にしたからだ。
オリジナル版・ポスターには作品の持ついい感じが出ているが、日本版のものはかなり残念なモノになっていると思った。

サンダンス映画祭、2008年度「アルフレッド・スローン(GMの社長)」賞受賞作。この賞は特に「科学・テクノロジー」をテーマにした作品、あるいはその分野にいる主人公が登場する作品に与えられる。

この映画祭の受賞作は商業価値以前に地味なものが多いが、どれも人間ドラマを軸にした脚本・ストーリー(記録映画を除き)が良くないともらえない傾向にある。
この「Sleep Dealer」(「睡眠を取引するもの」)も受賞した「科学・テクノロジー」部門でありながら「人間ドラマ」がしっかり描かれている点がまず評価されている。

邦題並びにそのイメージデザインからは思いも拠らないが(この時点の日本の商業・広報戦略は失敗、本作を全く読み違えている)、かなりリアルな問題をベースにしている。
中南米においても、水資源を巡る外資系巨大企業の独占や搾取は問題になっているが、特にその社会問題を扱っている訳でもないが、そういう背景・生活の中で生きる人物が描かれている。

映画同様に、現実には企業もテロ対策に自警団、傭兵部隊を組織して施設警備に当たらせている。また監視システムが強化され、通信ネットはあらゆる媒体にリンクされている。
主人公は、辺鄙な地域から、都市圏や情報に対する好奇心、単なる素朴な憧れによってそれらの情報を盗聴(人々が交わすチャットをただ聞いているだけ)しているわけだが、このデバイスやその通信操作が傍受されている。つまりテロリストに間違えられ攻撃の対象になってしまう・・・

近未来という語から来るイメージよりも内容は実際にはタイムリーだ。ミサイルを搭載した遠隔無人操作機はアフガニスタンやイラク、あるいはパキスタン等で現在進行形でその悪名を轟かせている。毎年数千人規模で市民や民間施設の被害が後を絶たないからだ。米国による監視や一操作兵による暗殺まがいの国外操作、この作品のように市民が攻撃ターゲットになってしまうのは既にフィクションの世界ではなくなっている・・・

映画の中にも、遠隔操作を行うエースパイロットが登場し、人々はその攻撃シーンをライブ中継で観戦している。現実でも「戦争」はこんなゲーム感覚なものに限りなく近くなって来ている。アメリカ国防総省がゲーム雑誌等へ広告を出し、優秀な無人機パイロット(オペレーター)のリクルートを行っているというのは実際ジョークなどではない。

このパイロットはもう一人の主人公とも言える。

「戦争」という名の下、人を殺害することの罪悪感は、人間を攻撃・殺傷する操作が現実感覚を欠いてるままなら問題はない。彼は今までも何の疑問を感じることなく、任務を遂行し「正義」を妄信してきた。しかしある時初めて攻撃するターゲットである人間と遠隔操作・画面を通して対面することになる。
相手の男(主人公の父親)が爆撃された家から血を流しながら這い出てくる。彼はカメラの方をじっと見つめる・・・

パイロットはいつも通り攻撃操作を行い任務を遂行するが、この一事がいつまでも脳裏を離れず苦悩し、自身は物語中で生活の現実感を欠いたまま、善悪の狭間で葛藤することになる。

それ以降、殺害した男とその家族(主人公)について情報を集めながら、彼を主人公に会いに行くという行動に駆り立て、後半物語は急展開していく・・・

●登場人物の一人で、有名な俳優ではレオノア・ヴァレラ(Leonor Varela)が出演している(『ブレイド2』『イノセント・ボイス』『ゴール2』他)。
年齢層に開きがある役も別人のようにこなして来た。今回も幅のある役作りだ。20代後半のきれいなラテン系お姉さんだなと思っていたら、最後のテロップで知ったが彼女だった。意外な発見。

●度肝を抜かれる映像やハイテク・メカを期待する人はちょっと拍子抜けするだろう。人知れずどこかで語られる物語。そんな小品というか佳作という感じ。薀蓄(うんちく)めいて、舞台背景や設定が特に説明されるわけではない。それが逆にリアルなドラマに仕上げている。
資金に余裕があって、映画が好きな方は購入してコレクション(スペイン語映画として)に加えておいても損はないだろう。後々までメジャーに販売され続ける作品ではないので、良作であっても残念ながら無くなってしまうことは十分に考えられる。

2009年09月09日(水)記す

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